World Tour 1981

インド人のお得意の台詞は「ノープロブレム」
でも、あんたにゃ言われたかないのよね
ってことが多かったりして

 その9…ノープロブレム

リシュケシュの町の商店街を歩く度に感じる、この違和感は何だろう?と、ふと考えた。
路が舗装してないことと、一軒一々の店が小さい(秋葉原のガード下の電子部品屋街の感じ)だけで、俺の住んでいた参宮橋の商店街とさして変わりはないはず。ただし、全体的に汚い。きっと終戦直後の闇市って、こんなんだっただろうなあ。売っているものも品種はさして変わらないんだが、どれも品質をぐーんと落とした感じだな。
今はどうだか知らんが、インドでは、自国生産品保護の為に電化製品などには高い関税がかけられ、旅行者や個人で持ち込みました的なものを除くと外国製品は殆ど売っていなかったのだ。
代わりにコピーものは非常に多い。特に日本のブランドネームは人気が高いとみえて、HITACHI、SANYO、SONYなどのロゴを誇らしげに貼ったラジカセなどが幅をきかせている。もちろん、全部インド製である。高級品になると、正面にToshibaのマーク、右上にSHARPとダブルブランドの物もあったりする。SEIKO(ロゴデザインもそのまんま)のアイスクリームなんてのもあったな。

とにかくインドは全てのものを自国生産している。
で、ラジカセを例にとれば、「高級品」イコール「でかい音がする」である。なもんで、ヴォリュームのつまみは常時目一杯のフルテン状態である。インド人が買い物をするときには、必ずこのツマミぐい回しチェックをするわけだな。いくら音が割れようが歪もうがおかまいなしで、そこんとこは、評価の対象には入っていないらしい。質より量か。
そんな使い方をするものだから、もともと粗悪な造りのインド製品はすぐこわれる。が、基本的に皆貧しいから、壊れたら買い換えるなんてことはもちろんしない。直して使う。うちの親父みたいだな。

母はそろそろ新しい洗濯機が欲しかったりするのだが、壊れても直ぐに親父が直してしまうので、しょうがない、古いのを使い続けるはめになるんだ。

話を戻す。
よって、インド人の修理に対する努力の姿勢とその技術力は異常に高い。何でも直す。直せなくても直す。使い捨てライターのガス詰め屋なんてのもいる。タクシーやオートリクシャはしょっちゅうフードを開けてエンジンを覗き込んでいるし、バスも停車するたんびにエンジンやミッションを全てばらしてたりする。その直し方がまた凄い。どうせ部品の造りも粗雑なものだから、ネジ穴などはすぐに潰れてしまう。そこんところを無理やり叩いたり押し込んだり引っこ抜いたりしばったり、でかいネジで代用したりして、とりあえず直してしまうのだ。

で、もう一度いうが、インドは全てのものを自国生産している。インドポップスではインド製シンセの音が聴けるし、インド製人工衛星も飛べば、インド製原子力発電所も稼働しているのである。
インド製ゲンバクも持っているのだよ。ちゃんとしたネジ、使ってるんだろうか?

車といえば、インドに着いて間もない頃、ニューデリーでタクシーやオートリクシャに乗っていて気になったのは運ちゃん達の運転の荒さである。
とりあえず、抜かす。前にバスがいれば、クラクションを盛大にならして追い越す。タクシーがいれば、またクラクションで追い抜かす。オートリクシャが10台まとめてロータリーに突っ込めば、エフワンのスタート直後の第一コーナーさながらの大混戦である。
そして、私が乗ったオートリクシャの運ちゃんは、追い越す度に必ず大袈裟に振り向いて相手をギロッと睨むのである。気が付くと、我々を追い抜いて行く運ちゃん達も皆、必ずこちらをギロッと睨んで行ったもんだ。

町と町を結ぶ街道は全国的に良く整備されており、たいてい1メートル程盛土をした2車線分の幅の道路の中央1車線分が舗装されている。ここをバスは客を満載して猛スピードで飛ばす。時折、対向車があるが、どちらも道の真中を猛スピードで走る。あわや正面衝突というぎりぎりの瞬間に、お互い左の路肩にさっと避けて半身で相手をかわし、また鋪装路面中央に戻って走り去るのである。アメリカのフィフティーズ映画に出てくる、度胸試しのチキンレースを日常的にしている訳だ。で、当然のことだが、路肩の外、1メートル下の畑には、このチキンレースで失敗したタクシーやトラックの残骸が、ところどころに転がってたりする。

ノープロブレム。である。

(左のリアルなムービーはアメリカ人がチキン「臆病者」をからかうときのポーズだ。インド人がこれをやると、「ジキジキ」といってイヤらしい意味になるのを俺は知っている。)

つづく


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