World Tour 1981

だな。

 その30…New Yorkへ

アムステルダムに来て3ヵ月が過ぎ、そろそろ旅の虫がうずき始めた。私は新たな旅の資金を得て、オランダを旅立つことにした。最後の晩、職場の方々は労をねぎらって、私をレストランのお客としてご馳走してくれた。ありがたや。お世話になりました。

さて、ここまでの旅はすべて、バスの旅であった。しかし、これより西は大西洋であり、バスは無い。私が見つけた格安航空チケットは、マーチン・エアーという、聞いたこともないチャーター会社のニューヨーク行きである。実はロンドンに向かいたかったのだが、情報によるとヒースロー空港の入国審査はかなり厳しく、出国用のチケットあるいはそれに足るだけの現金の持ち合わせがないと、回れ右で帰されてしまうというのだ。もちろん、外国人の不法就労を防ぐための処置である。ましてや、各地でテロリスト扱いされた私がIRAの活動分子に間違えられるのも、目に見えている。ドーバー海峡をホバークラフトで渡れば、状況はましなんだろうか? 結局ロンドンはまたの機会にしようということで、次の寄港地はニューヨークとなったわけである。

マーチン・エアーのエアバスに乗ってみると、またまた乗客のほとんどは私と同類のボンビー旅行者で占められており、座席ピッチの狭い機内に大量に詰め込まれていた。機内持ち込みにしたハンディシンセをかき鳴らし、ご近所に挨拶がてらのセッション大会となる。さすがにエアバスだ。結局、今まで通りのバス旅行状態で、なーんも変わっとらん。

ケネディ空港の入国審査では、何の問題もなく、最長の3ヵ月の許可をゲットする。こいつはツイテるぜ。サブウェイに乗ってマンハッタンへ渡る。ところが、五十何丁目かの駅で降りて階段を登り地上に出たとたん、不思議な感覚に捉えられた。「なんだ、これは?インドに来ちまったぞ!」というのがそのときの印象である。なぜだかはわからない。地下鉄の階段の上に見えたのは青い空とその周りを囲む摩天楼であるのだが。

嗅覚と記憶は非常に強く結び付いているね。ふっと香った匂いは、一瞬にしてその同じ空気を感じた時の場所と状況に人をワープさせる。そんな、感じだった。このときは、インドと同じ匂いがしたわけじゃあ無かったはずなんだけどね。

相変わらず、いつもの調子で、路地にいたインディアンのルンペンに声をかけられてしばし立ち話。彼はアル中でアル。民族の誇りを失った者の悲しさを感じる。だが私は地球の平和の為なら、よろこんで民族的帰属意識を投げ捨てて差し上げるよ。

とにかく、いつものパターンで、最初は宿探しである。電話をかけまくって、安宿を探す。最終的に、タイムズ・スクエアの外れ、ウェスト51番街のワシントン・ジェファーソンに決定する。一応ホテルなんだが、51番街といってもかなり外れの寂しい場所にあり、宿泊客は、ほとんどここに住んでると思われる長期滞在型じいさんばかりである。東京並みのここの物価では、たいしたホテルには泊まれないわな。冷蔵庫、キッチンにテレビをオプションで足して、週110ドルくらいだったと記憶している。書店には、「ニューヨーク、一日25ドル」なんて本が置いてあったが、毎日ホットドッグで暮らさなきゃならんじゃないか? まあ、様子をみて、長く居ることになりそうなら、月決めのアパートを探そう。誰か相方を見つけて、ロフトをシェアするという手もあるさ。

さて、こんな大都会においては、さすがの無精な私もぐずぐずのらくらしている訳にはゆかぬ。早速行動を開始しよう。ん?何のだ?んー、まずはヴィレッジ・ヴォイスちゅう新聞を買って、情報収集だな。

つづく


Back to index